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【書評】元自衛隊員が安保法案で言いたいこと

「日本と日本人を危うくする安保法制の落とし穴」井筒高雄著

9月12日に元陸上自衛隊レンジャーの井筒高雄さんが講演に来たとき、出版したばかりだというこの本を買いました。

井筒さんの話を聞いてまず思ったのが、「あ、安保法制の本当の当事者は自衛隊員だったんだ」ということです。

若者や憲法学者が最初に立ちあがってクローズアップされたけれど、実は一番その法案の直撃を受ける自衛隊員の人たちは、”本当は”どう思っているんだろう。

自衛隊員は法律により政治活動が禁じられているそうなので、自ら声を上げることはまずないでしょう。代わりに声をあげているOBも、実名で表に出ているのはこの井筒さんと泥憲和さんくらいです。

その井筒さんが専門家たちに疑問や意見をぶつけ、渾身の思いで自衛隊員の声を代弁しようと出したのがこの一冊です。

驚くべきは出版のスピード。対談の中では「法案が衆議院を通って参議院で今審議されていますが」という一文も出てきて、「え、それって今ですけど!」と思ったり。きっと井筒さんは、国会が終わるまでに間に合え、間に合えと祈るような気持ちで作ったのではないかと思います。発行日は9月3日。まだアマゾンにはレビューがひとつしかついていません(笑)。

軍隊が正式に認められている国では、軍人の人権や身分保障、安全措置もしっかり制度づくりしてから戦場に送られますが、日本は軍人ではない「ただの人」が軍人のふりをして戦場に送られるがゆえに、非常にさまざまなリスクにさらされるのだそうです。

自衛隊員は人として大切にされているのだろうか。自衛隊員は戦争に行く人だから、少々危険な目にあっても当然ではないかと、私は心のどこかで自衛隊員の命を軽く見ていたかもしれません。

以下、印象的な部分を引用します。興味のある方は、本を読んでみてください。実質的には井筒さんがインタビュアーとなり、各界の第一人者に語ってもらう形となっています。

「住民の保護が法律の目的と書いてありますが、やることは何かといえば、検問所の設置とか巡回となっている。すなわちそれは、住民が襲われた時の防護ですね。ということは、はじめからこちらが武器を使わなければいけないことです。武器を使えば相手だって撃ってくる。撃ち返してくるわけですから、それは災害派遣のリスクとは全然性質が違うでしょうということです」(<防衛・安全保障> 柳澤協二 「政治家に命を賭ける覚悟はあるのか」)

「今の自衛隊は「戦略」を必要としていないのです。専守防衛が基本ですから、「戦術」だけでいい。「戦略」はアメリカが考えてきた。でも、アメリカが国防の最大の脅威と位置付けているグローバルテロリズムにアメリカは、”負けて”いる。日本にとって、これは対岸の火事でしょうか。僕は違うと思います。イスラム国はすでに警告しています。だったら、アメリカの戦略に追従した戦略ではなく、“負けている“アメリカと共に敵に勝利する戦略を自主的に考えないとダメだと思います」(<PKO> 伊勢崎賢治 「国際紛争の現場からほど遠い空論」)

「このところ、オバマ大統領の「TPPは日本の市場開放のためだ」という発言や、カーター国防長官の「自衛隊を米国のために使うようにする」といった発言のように、日本に対するあからさまな本音の発言が目立ちます。かつての米国はこんなことはなかった。オバマ政権の米国が追い込まれているということもありますが、やはり安倍首相の日本を見くびっている証拠です」(<外交> 天木直人 「対米従属からいまこそ自立すべき時」)

「さらに指摘したいのは、国際情勢の変化です。ホルムズ海峡の沿岸国での機雷を敷設できるのはイランだけですが、いまや米国との核協議で合意がみられ、敵国とはみなされなくなる可能性が出てきたのです。つまり、日本が米軍の後方支援として機雷除去にあたる現実性、必要性がなくなったというわけです」(<経済> 植草一秀 「TPPと戦争法案が結びつくと経済沈没」)

「イラクに派遣された陸上自衛隊は「人助け」「国づくり」に徹したものの、自衛隊の派遣そのものがアメリカのイラク戦争を支援するシンボルだった。当時アルカイダのリーダーだったオサマ・ビン・ラディンは敵視する国の中に日本を入れた。そして2012年、アルジェリアで起きた石油プラントのテロ事件で40人死んだ中で一番多かったのは日本人の10人でした。すでに海外の日本人はイラク派兵によって相当危険な立場に追いやられたわけです」(<言論> 半田滋 「もはや国民に防衛情報は知らされない」)

「安倍さんを頂点としたあちら側には戦争のリアリティがない。自衛官を道具のように思っている、人間扱いしていないということで、僕はものすごく反発を覚えて腹が立つのよ。でも、左派の人たちだって反自衛隊運動をあたかも政権奪取運動、革命運動の道具にするだけで自衛官のおかれているリアルな立場をほんとうに考えているわけではない」(<自衛隊の現場から> 泥憲和 「売られてもいない他人の喧嘩を買う愚行」)

「安倍首相が安保法制を成立させたいのであれば、全自衛隊員の「服務の宣誓」のやり直し、つまり「再契約」が必要だと考えます。しかし、これをやると、おそらく多くの現職自衛官は「再契約」しないでしょう。その結果、新安保法制の担い手がいなくなる可能性が高い。それはまずいとなると、知らんぷりをする(その可能性が大だと思いますが)。そして、派遣された自衛隊員に不測の事態が起きれば時の政府は責任を追及されることになります」(<体験的反安保法制論> 井筒高雄 「元陸自レンジャーによる体験的反安保法制論」)

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