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外国人は生活保護の決定に文句が言えますか・パート2

 前回の投稿「外国人は生活保護の決定に文句が言えますか」で、ちょっと首を突っ込んだ外国人の生活保護訴訟。ちょっとどころでは済まないぜ、とばかりに10月18日、違う判決が出ました。今度は中国人女性が敗訴。ああー、頭が痛い!

 おさらいすると、中国人女性の事件は、次のようなものでした。
(1)大分市が中国人女性の生活保護申請を審査の末に却下し、
(2)その却下を不服として大分県に行政不服審査請求したけれど、大分県は「そもそも生活保護は日本人対象の法律。だから外国人に行った却下という行為は不服審査の請求の対象となる『行政処分』には当たらない」として審査せず却下しました。

 女性は、(2)の問題について大分県に「大分市の生活保護の審査と却下行為は、相手が外国人と言えども明らかに『処分』であり、審査請求の対象となる」と訴えて、その訴えは認められました。前回取り上げたニュースです。

 実は、この女性は(1)の問題についても、大分市に対して「外国籍であることなどを理由に生活保護申請を却下したのは違法。外国人にも受給権があり、自分は受給されるべき状況だった」という訴訟をしていました。これが敗訴になったのです。

   □   □

 国にとって、より大切な訴訟は(1)であるようです。一番の争点は「外国人に生活保護の受給権があるかどうか」。10月18日付毎日新聞の報道を引用すると、次のような結論でした。

『一志裁判長は受給権について「永住外国人を保護対象に含めないことが憲法に反するとは言えない」と述べ』

 裁判長は、きちんと憲法判断までして、外国人の社会保障受給の権利を否定しました。(日本の生活保護制度が受けられなくても、いざとなれば帰国するなどして母国から保護を受ければ健康で文化的な最低限度の生活が送れるでしょう、という意味かな)

 大切な発言がもうひとつあります。引用します。

『一志泰滋裁判長は「生活保護法は日本国籍者に限定した趣旨。外国人への生活保護は贈与にあたり、受給権はない」として女性の請求をいずれも退けた』

 外国人への生活保護の受給は何なのか。それは政府から外国人への贈与である、というのが今回の裁判所の答えです。私も前の投稿で「恩恵(お恵み)」と表現しましたが、公式に「贈与」という言葉が出てきたわけです。

 この判決、受給権についての判断はきっちり出したんですが、その次の「中国人女性の生活保護申請に対する大分市の審査が適正であったかどうか」という問題には全く触れることなく終わってしまいました。

  とりあえず県に不服審査をしてもらい、それで不服なら裁判所まで行政訴訟してこい、ということでしょうかね。

 それにしても「贈与」という公式表現、かなり上から目線ですね。在日外国人も日本人と同じ税率で納税していますが、それは日本への「贈与」ではないはず、ですよね。

   □   □

 19日の山陽新聞に載っていた記事には、「生活保障を与える義務は一義的には国籍のある国が負うものだ」という判決文の引用も書いてあり、これも一考する価値はあると思いました。大不況や有事など極限の場合には、外国人へのサービスは制限されるけれど、それが不服ならば帰化するか母国へ帰って保護を受けてください、ということになるのだと思います。はっ、今の日本は大不況でしたね…。

領海侵犯と入管

 日本の領海に入った中国漁船の船長が逮捕されたという尖閣諸島の事件について、ある日ツイッタ―で気になる文章を見ました。

『中国人船長を逮捕したのは、民主党政権の失敗だった。自民党時代には領海に入る不審船があってもすぐ入管が退去強制処分にして、国外へ追い出して終わらせていた』

 入管は容疑者の身柄を収容することなく退去強制処分できるのかな、入管が独断でそんなことできるのかな、と疑問が尽きなかったので、何となくこの発言が心の中に残っていました。

   □   □

 今日はたまたま、入管を定年退職して行政書士をしている方に会ったので、その疑問をぶつけてみました。

「このツイッタ―の発言は本当ですか?」
「ええ、本当ですよ。身柄は収容しなくても、早急に手続きをして退去強制処分にしてました」

うわー、本当なんだ!

「高度な政治判断を必要とする場合は大臣や首相に判断をあおぎます。でも、できるだけ政治判断を必要とするような局面にならないよう処理するのが、リーガルオフィサーの仕事です」

 なるほどー。
 今回の逮捕は高度な政治的判断を必要とするので、あらかじめ政権トップに伺いをたててやったであろう、ともおっしゃっていました。

 ああ、ここ数日のもやもやがすっきりしました。

 ちなみに領海侵犯のウィキペディア情報はこちら

 尖閣列島中国漁船衝突事件のウィキペディア情報はこちら
 なんと自民党の谷垣総裁がツイッタ―と同じ発言をしています。あの発言は谷垣さんのものだったのかな。


非行政書士行為を取り締まっています

10月は行政書士制度広報月間です。

 今月は、行政書士でない人が許認可の書類等を作成する「非行政書士行為」を、行政書士会が取り締まっています。

 参考までに、以前の投稿「NPOの非行政書士行為」のリンクを載せておきます。報酬をもらわなくても、行政書士のような書類作成の仕事を日常的に行っている人は、取り締まりの対象となりますので、気をつけてくださいね。

http://news.visatojapan.com/?eid=950948

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いつもは3位までしか出しませんが、今月はイベントのお知らせがランクインしているので、5位まで発表しました。

入管政策に関するニュースは注目度高いです。経済や労働事情とリンクして、入管政策がどんどん変わっている時期なのですねえ。

外国人は生活保護の決定に文句が言えますか

(注)この記事にはパート2もあります。

 日本で生まれ育ち永住資格を持つ中国人女性(78)が大分市に生活保護申請を出したら審査の結果却下され(2008年12月)、その結果を不服として大分県へ審査請求したところ、「外国人は生活保護に関して行政に不服申し立てする権利がない」として請求そのものを却下する裁決をした(2009年3月)、という事件がありました。

 この事件について女性は県の裁決の取り消しを求めて行政訴訟していましたが、大分地裁は9月30日、女性の訴えを認めて県の裁決を違法とし、取り消す判決をしました。時事通信、朝日新聞等の多数のメディアが伝えました。

生活保護制度は、憲法25条の生存権(「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」)に基づいてつくられた制度です。生活保護法では、保護の対象者は日本国籍の人のみとしていますが(1、2条)、「正当な理由で日本国内に住む外国籍の者に対しても、生活保護法を準用する」という1954年の厚生省社会局長通知(社発第382号)が出たあとは、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者など日本国への定着性が認められる外国人に対して、予算措置という形で保護費の支給を実施しています。

そして、政府の通知に基づいて行った法の例外措置(お恵みのようなもの)なのだから、外国人に対して生活保護を与えないという決定をしたとしても、行政側は文句を言われる筋合いはないよ、という考え方が大分県の主張です(分かりやすく意訳してますけど)。

対する中国人女性は、なぜ「準用」という措置が行われたのかという根源の部分を強調します。在日外国人に対しても生存権を保護しよう(=憲法の理念を実現しよう)という考えがあるからこそ、法を準用して外国人に生活保護請求権を認めているのだから、たとえ法律で明文化されていない相手(外国人)であっても、“憲法に照らせば”行政側は法律に沿ってきちんと「処分」する義務がある。それなのに大分市の生活保護却下の行為が「処分」にあたらないとするのは違法だ、という趣旨の主張していました。

   □   □

日本における外国人の人権は「憲法に定めた人権として守られる(つまり政府は憲法に従って人権を守る義務がある)」のか、「政府の恩恵(お恵み)によって守られる(つまり法的義務はない)」のか、という問題が、この裁判の中に横たわっています。難しいですねー。私の言いたいことが伝わっているでしょうか。

 政府の本音は「外国人の人権を守るための経費が増えれば、日本の財政を圧迫する」という懸念だと思います。まあ理解できます。そのことと、外国人の人権をどうとらえるか、という解釈は密接に結びついている(と思われている)。だからこそ問題がややこしいんだと思います。

☆この地裁判決は県が控訴しなかったため、2010年10月15日をもって中国人女性の勝訴が確定しました(同日の共同通信の報道より)。

 厚生労働省は2001年に、行政不服審査法が規定する審査請求の対象 となる「処分」に当たらないとして「外国人からの不服申し立てについては却下すべき」との通知を都道府県などに出しており、県は通知を根拠に審査請求を却 下する裁決を出していたそうです。厚労省は、通知の見直し作業を始めるとのことです。

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