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韓国系、朝鮮系、それぞれの新年会 

今年は珍しく韓国民団と朝鮮総連のそれぞれの新年会に出席できる機会があったので、参加してきました。おいしい料理もいただきましたけど、何よりもがっつりと「平和的に紛争を解決するにはどうすればいいか」という命題を勉強させていただきました。

 

  □  ■  □

 

最初は韓国民団の新年会。平昌オリンピックが迫っていることや、朝鮮共和国との緊張緩和への期待が高まっていたこともあり、人々の気持ちは上向きな感じで、華やかな宴でした。

 

ただ、神戸の韓国総領事のお話は少しトーンが違いました。緊張している日韓の問題について、日本語で丁寧にお話してくださいました。

 

総領事は、「文大統領が慰安婦問題合意に関する公約を撤回した」という発表がまるで合意を撤回したかのように誤解されている、と非常に気にしていました。

 

文大統領は選挙時に、慰安婦合意について(見直しのため)日本と再交渉すると公約していました。でも結果的には、二国間合意を維持して見直しの交渉はしない、と決めたのです。それが「公約の撤回」の意味なのだと話していました。

 

つまり、合意に関する韓国市民の不満はあくまで韓国内で対処し、日本との約束を尊重した、ということです。国際的な合意の意味を重んじた決断をしたのだと思います。

 

 朝鮮半島をめぐる緊張状態への対処については、「日韓がともに空高く羽ばたき、遠くを見通す気持ちでこの問題に取り組むことを望んでいます」と述べられました。

 

世界全体で取り組むべき問題として朝鮮半島問題をとらえ、各国が自分の役割を自覚して冷静に対処すれば、解決への希望が見いだせるのではないか、という提案なのだと思います。

 

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朝鮮総連の新年会は、第一部が講演会、第二部が懇親会でした。

 

講演は、元外務省職員で、ソ連、中国公館への在任歴がある浅井基文氏が朝鮮半島問題とその展望についてお話してくださいました。

 

アメリカは、敵対する国(イラク、朝鮮など)を「脅威」(攻撃してくる危険がある)だとして攻撃したり、攻撃するぞと脅したりしている。だが「脅威」とされた国々の側から見れば、アメリカが攻撃してくるから防御のために武装している側面が強い。朝鮮共和国政府も繰り返しそう発言している。アメリカが威嚇をやめて安全を保障することで、朝鮮共和国側の武装解除が現実味を帯びる、と浅井先生は説明されました。

 

講演のお話によると、1950年ごろの南北朝鮮が激しく対立していた時代は、韓国の背後にアメリカ、朝鮮共和国の背後にソ連と中国がいた。だけどロシア(ソ連)は、1990年代の国内体制崩壊、再編成の時代に国際問題から手を引いた。中国も経済開放路線に転換してから国際対立を避けるようになり、結果として朝鮮共和国が孤立化した。そしてアメリカの圧力が肥大化し、パワーバランスが大きく崩れたそうです。アメリカを抑制する国がいなくなってしまった。

 

紛争回避の動きとして浅井先生が注目しているのは、朝鮮共和国が国連組織と意思疎通を始めたという部分だそうです。国連が朝鮮共和国の協力を得て本格的に平和的解決に取り組み始めたら、アメリカも勝手に攻撃はできなくなる。これがアメリカに対する抑止力になる可能性は大きい、というのです。

 

文大統領の政治的対応にも注目しているそうです。韓国はアメリカに対して力を持つようになっているので、韓国がNOと言えば、アメリカは勝手には朝鮮共和国を攻撃できない。これも抑止力になっているということです。

 

よく考えると国連の役職員にも韓国の人がいましたね。韓国の中では、国際的視野で問題解決を図るための努力が地道に行われているのかもしれません。文大統領も親が脱北者だったということで、北への思い入れ(配慮)は深いのではないかと思います。

 

国際紛争の解決は一国が圧力で制するのではなく、国同士のパワーバランスを回復させる方が人的被害を最小限にできるのではないかな、と私は思っています。講演のあとで浅井先生に尋ねてみました。

 

「今はロシアも国力を取り戻して、中国も安定してきたので、この二国がアメリカとのパワーバランスを取ることで問題解決に結びつく可能性はありますか」

 

「確かにロシアも中国も国際問題の解決に興味を持って取り組み始めたので、パワーバランスはそのようになるかもしれません。でもアメリカは北朝鮮問題があるから日韓に米軍を置けているという事情があるので、解決はやはり簡単ではないでしょう」

 

というお答えでした。

 

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市民としては問題をどう見ていくべきなのか、ですが、浅井先生はよい言葉をおっしゃっていました。

 

「他者(相手側)になりきって、なぜ相手がそのような心情になるのか分かるまでなりきることで、相手を理解できて現実的な解決が見えるようになる」

 

相手がどんな歴史、文化、問題背景で今のような敵対的な心情や態度を抱くようになったか、を相手になりきって知ること。これを「他者感覚」と呼んでいました。

 

「他者感覚が真の平和の土台です」(浅井基文)

http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/2007/197.html

 

この感覚を浅井先生は外交の現場で身につけたといいます。

 

たまたま第二部の懇親会でトークした在日サッカー選手(日、韓でプレーし、北朝鮮代表にもなった)のアン・ヨンハさん(倉敷出身)も「日、韓に住み、共和国の人たちとプレーする中で、多くの立場を理解できるようになった。在日コリアンというのは多くの当事国市民の立場を理解できるという点で、自分たちにこそできることがあるはず」と話していました。

 

これを聞いて私のテーブル周辺では「これは、浅井先生の【他者感覚】ですねえ〜」と静かに盛り上がっていたのでした(笑)。

 

アン・ヨンハ

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E8%8B%B1%E5%AD%A6