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非常勤外国人講師の保険加入に関する通知

今、私は行政法の勉強をしているんですが、外国人に関するこんな訴訟があり、興味を持っていました。

 

「語学学校ベルリッツの外国人語学講師(40分×週35レッスン担当)が、労働時間の減少を理由に厚生年金保険加入資格を喪失。これを不服として資格確認請求をしたが却下され、これに対する審査請求、再審査請求も棄却されたので、却下処分の取り消しを求めて提訴」

 

http://www.ak-law.org/news/1678/

 

そして、判決は勝訴(保険加入資格を認める)でした。

 

でも、完全に勝っているわけではありません。争点のポイントのひとつとなった


 (1)「語学学校に雇用される外国人講師係る健康保険・厚生年金保険の適用について」(課長通知)は適法


 という判断について詳しく知るため、この通知を実際に取り寄せてみました。

 

https://dl.dropboxusercontent.com/u/36156246/050519intlteaherTuchi.pdf

 

 

通知には、「勤務時間の安定しない外国人非常勤講師の健康保険・年金への加入を認めるかどうか」の判断基準が書かれています。

 

大まかにいうと「まず常勤の『外国人講師』に比べて労働時間がどれくらい短いかで判断してください。その学校に外国人の常勤講師がいなければ、常勤日本人職員の労働時間と比べて判断してください」という指示です。

 

この時点で、私はあれ、と思いました。労働時間を比べるのに、なんで外国人労働者同士「だけ」で判断するのかな。どうして最初から日本人と同じ基準じゃないの? という素朴な疑問です。

 

よく考えれば、通知の表題(語学学校に雇用される外国人講師係る健康保険・厚生年金保険の適用について)も疑問です。なぜ外国人講師「だけ」、保険適用の判断基準を示す必要があったのかな。日本人講師も勤めているはずなのに。

 

裁判所では、この通知は「適法」と判示されています。うーん、分からない。意味もなく外国人の保険適用範囲と日本人の適用範囲を分けて扱うのが、適法なんだろうか。

 

 


外国人の生活保護受給手続きを保証する判決

【注意】この訴訟については、2011年11月28日に大分市が最高裁へ上告しました。

 ずっと時間が取れずにいたのですが、11月に判決が出た外国人の生活保護訴訟の判決文の情報提供をします。高齢者虐待事件でちょっと重いし難しいけれど、外国人の生活保護を受ける権利について、一歩踏み込んで保証する内容となっています。

 中国籍住民(永住者)が大分市へ出した生活保護申請が却下され、行政不服審査請求したところ「もともと生活保護受給権のない外国人からの申請を却下したことは行政処分に当たらないから、不服審査請求の資格もない」としてこれも却下された、という事件についての高裁判決(2011年11月15日付、平成22年(行コ)第38号生活保護開始決定義務付け等請求控訴事件)です。

内容のポイントは2つあります。

(1)永住的外国人(永住者、定住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等)に対する生活保護申請の却下は行政処分であると判断されていること(つまり処分に不服があれば審査請求できるということ)

(2)今回のケースでは、生活保護受給すべき理由はあったと認められるので、生活保護の開始決定を命じていること

  □   ■

 このケース、よく読むと中国籍の人は同居の親族から貯金を取られ、虐待されていた人でした。この人の財産を守るために親族以外の成年後見人を立て、親族から引き離して生活保護を受けながら施設で暮らせるようにしようと、手続きをしていた矢先の「生活保護申請却下」という処分でした。

 実は私も最近、ある方の成年後見人となって高齢の方の後見事務を始めたばかりです。私のように専門職の後見人は専門職後見人と呼ばれます。

 親族では後見人になれないケースが、よく専門職後見人へ回ってきます。中でも親族から経済的搾取を受けているケースは多く、親族から引き離して自立した生活を続けるには、生活保護の受給というのはとても大切な切り札なんですね。

 という訳で、なんだかとても身近に感じる事件でした。


外国人は生活保護の決定に文句が言えますか・パート2

 前回の投稿「外国人は生活保護の決定に文句が言えますか」で、ちょっと首を突っ込んだ外国人の生活保護訴訟。ちょっとどころでは済まないぜ、とばかりに10月18日、違う判決が出ました。今度は中国人女性が敗訴。ああー、頭が痛い!

 おさらいすると、中国人女性の事件は、次のようなものでした。
(1)大分市が中国人女性の生活保護申請を審査の末に却下し、
(2)その却下を不服として大分県に行政不服審査請求したけれど、大分県は「そもそも生活保護は日本人対象の法律。だから外国人に行った却下という行為は不服審査の請求の対象となる『行政処分』には当たらない」として審査せず却下しました。

 女性は、(2)の問題について大分県に「大分市の生活保護の審査と却下行為は、相手が外国人と言えども明らかに『処分』であり、審査請求の対象となる」と訴えて、その訴えは認められました。前回取り上げたニュースです。

 実は、この女性は(1)の問題についても、大分市に対して「外国籍であることなどを理由に生活保護申請を却下したのは違法。外国人にも受給権があり、自分は受給されるべき状況だった」という訴訟をしていました。これが敗訴になったのです。

   □   □

 国にとって、より大切な訴訟は(1)であるようです。一番の争点は「外国人に生活保護の受給権があるかどうか」。10月18日付毎日新聞の報道を引用すると、次のような結論でした。

『一志裁判長は受給権について「永住外国人を保護対象に含めないことが憲法に反するとは言えない」と述べ』

 裁判長は、きちんと憲法判断までして、外国人の社会保障受給の権利を否定しました。(日本の生活保護制度が受けられなくても、いざとなれば帰国するなどして母国から保護を受ければ健康で文化的な最低限度の生活が送れるでしょう、という意味かな)

 大切な発言がもうひとつあります。引用します。

『一志泰滋裁判長は「生活保護法は日本国籍者に限定した趣旨。外国人への生活保護は贈与にあたり、受給権はない」として女性の請求をいずれも退けた』

 外国人への生活保護の受給は何なのか。それは政府から外国人への贈与である、というのが今回の裁判所の答えです。私も前の投稿で「恩恵(お恵み)」と表現しましたが、公式に「贈与」という言葉が出てきたわけです。

 この判決、受給権についての判断はきっちり出したんですが、その次の「中国人女性の生活保護申請に対する大分市の審査が適正であったかどうか」という問題には全く触れることなく終わってしまいました。

  とりあえず県に不服審査をしてもらい、それで不服なら裁判所まで行政訴訟してこい、ということでしょうかね。

 それにしても「贈与」という公式表現、かなり上から目線ですね。在日外国人も日本人と同じ税率で納税していますが、それは日本への「贈与」ではないはず、ですよね。

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 19日の山陽新聞に載っていた記事には、「生活保障を与える義務は一義的には国籍のある国が負うものだ」という判決文の引用も書いてあり、これも一考する価値はあると思いました。大不況や有事など極限の場合には、外国人へのサービスは制限されるけれど、それが不服ならば帰化するか母国へ帰って保護を受けてください、ということになるのだと思います。はっ、今の日本は大不況でしたね…。

外国人は生活保護の決定に文句が言えますか

(注)この記事にはパート2もあります。

 日本で生まれ育ち永住資格を持つ中国人女性(78)が大分市に生活保護申請を出したら審査の結果却下され(2008年12月)、その結果を不服として大分県へ審査請求したところ、「外国人は生活保護に関して行政に不服申し立てする権利がない」として請求そのものを却下する裁決をした(2009年3月)、という事件がありました。

 この事件について女性は県の裁決の取り消しを求めて行政訴訟していましたが、大分地裁は9月30日、女性の訴えを認めて県の裁決を違法とし、取り消す判決をしました。時事通信、朝日新聞等の多数のメディアが伝えました。

生活保護制度は、憲法25条の生存権(「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」)に基づいてつくられた制度です。生活保護法では、保護の対象者は日本国籍の人のみとしていますが(1、2条)、「正当な理由で日本国内に住む外国籍の者に対しても、生活保護法を準用する」という1954年の厚生省社会局長通知(社発第382号)が出たあとは、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者など日本国への定着性が認められる外国人に対して、予算措置という形で保護費の支給を実施しています。

そして、政府の通知に基づいて行った法の例外措置(お恵みのようなもの)なのだから、外国人に対して生活保護を与えないという決定をしたとしても、行政側は文句を言われる筋合いはないよ、という考え方が大分県の主張です(分かりやすく意訳してますけど)。

対する中国人女性は、なぜ「準用」という措置が行われたのかという根源の部分を強調します。在日外国人に対しても生存権を保護しよう(=憲法の理念を実現しよう)という考えがあるからこそ、法を準用して外国人に生活保護請求権を認めているのだから、たとえ法律で明文化されていない相手(外国人)であっても、“憲法に照らせば”行政側は法律に沿ってきちんと「処分」する義務がある。それなのに大分市の生活保護却下の行為が「処分」にあたらないとするのは違法だ、という趣旨の主張していました。

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日本における外国人の人権は「憲法に定めた人権として守られる(つまり政府は憲法に従って人権を守る義務がある)」のか、「政府の恩恵(お恵み)によって守られる(つまり法的義務はない)」のか、という問題が、この裁判の中に横たわっています。難しいですねー。私の言いたいことが伝わっているでしょうか。

 政府の本音は「外国人の人権を守るための経費が増えれば、日本の財政を圧迫する」という懸念だと思います。まあ理解できます。そのことと、外国人の人権をどうとらえるか、という解釈は密接に結びついている(と思われている)。だからこそ問題がややこしいんだと思います。

☆この地裁判決は県が控訴しなかったため、2010年10月15日をもって中国人女性の勝訴が確定しました(同日の共同通信の報道より)。

 厚生労働省は2001年に、行政不服審査法が規定する審査請求の対象 となる「処分」に当たらないとして「外国人からの不服申し立てについては却下すべき」との通知を都道府県などに出しており、県は通知を根拠に審査請求を却 下する裁決を出していたそうです。厚労省は、通知の見直し作業を始めるとのことです。

入管窓口で保険証提示が不要な人

現在、入管では申請時に窓口で健康保険証を提示しなければいけません。審査には関係なく、厚労省から頼まれているからです。ですが、社会保障協定という2カ国間の協定を結んでいる国のうち一部の国は、日本の健康保険証を持っていなくてもよいことになっています。

これは、そのことを知らせた厚労省から入管への文書です。先輩行政書士さんからいただきました。ふーん。「短期間派遣される被用者」って、具体的にどれくらいの期間なのでしょう。2国間協定ってどの国も微妙に内容が違うので、難しいですね。


   □   □

(原文をタイプしたものなので、確認はしましたが打ち間違いがあるかもしれません。注意してください)

保保発0325第1号
保国発0325第1号
保高発0325第1号
年国発0325第1号
年管管発0325第2号
平成22年3月25日

法務省入国管理局在留課長 殿

厚生労働省保険局保険課長
厚生労働省保険局国民健康保険課長
厚生労働省保険局高齢者医療課長
厚生労働省年金局国際年金課長
厚生労働省年金局事業管理課長

在留資格の変更又は在留期間の更新の申請を行う外国人のうち「日本の社会保険制度への加入義務がない者」に係る取扱いについて

 外国人の社会保険制度への加入の促進については、「外国人の社会保険制度加入促進に係る協力依頼について」(平成21年11月24日保保発1124第1号・保国発1124第1号・保高発1124第1号・庁保険発1124001号)において、貴省へのご協力をお願いしているところです。
 「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」の改正により、4月1日以降、在留資格の変更又は在留期間の更新の申請(以下単に「申請」という。)の際に、窓口で保険証の提示を求めることになりますが、アメリカ合衆国、ベルギー王国、フランス共和国、オランダ王国及びチェコ共和国から日本に短期間派遣される被用者等については、社会保障協定に基づき、当該国の医療保険制度等に加入していることを条件に日本の医療保険制度への加入義務が免除されることから、日本の保険証を所持していない外国人がいると考えられます。
 つきましては、申請に対し窓口で保険証の提示を求めるに当たり、当該協定についてご理解いただきたく地方入国管理官署に対しご周知いただきますようお願い申し上げます。
 なお、今後の新たな協定締結国の追加等については、厚生労働省のホームページを確認願います。

外国人が年金の脱退一時金を受けるには

 これは社会保険庁が外国人の方向けに作成している脱退一時金手続きのお知らせと申請書式です。6か月以上国民年金や厚生年金に加入していた人は、脱退して出国してから2年以内に請求すれば脱退一時金がもらえる可能性があります。心当たりのある方は、ぜひ確認してください。

これはE-GOVのリンクです。電子申請の手続き案内が載っています。


Portuguese
http://www.sia.go.jp/e/pdf/portuguese.pdf

English
http://www.sia.go.jp/e/pdf/english.pdf

Korean
http://www.sia.go.jp/e/pdf/korean.pdf

Spanish
http://www.sia.go.jp/e/pdf/spanish.pdf

Indonesian
http://www.sia.go.jp/e/pdf/indonesian.pdf

〒168-8505東京都杉並区高井戸西3丁目5番24号
社会保険業務センター
TEL.81-3-6700-1165

社会保険庁のサイトからもダウンロードできます
http://www.sia.go.jp/e/lw.html

生活保護受給者の海外渡航を認める

 生活保護を受けている外国人が墓参などで海外に出た場合、これまでは保護を停止したり減額する措置が取られていました。ですが裁判の結果、海外に行ったことを理由に保護を停止することはできないことになりました。

 生活保護を受けている人が海外へ出た場合、保護の停止をしたのは違法であるという判決が2月28日に最高裁で出され、その結果を受けて厚生労働省から通知が出されています。

 外国人支援団体によると、通知の内容は次のようなものです。

・海外渡航したことを理由に生活保護を停止することはできない
・事前に渡航内容や費用を届け出させる
・渡航費用は収入認定する(つまり保護費が減額される)が、以下の場合は収入認定しない
   (1)親族の冠婚葬祭、危篤の場合及び墓参
   (2)修学旅行
   (3)公的機関が主催する文化・スポーツ等の国際的な大会への参加(選抜または招待された場合に限る)


 詳しい資料は以下の通りです。

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