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風営店での留学生バイトが公式に禁止へ

【注意】この規則改正はすでに行われ、以下に書いた資格外活動許可の条文(入管法施行規則19条第5項)は正式な条文となっています。(2011.12.1現在)


 今年7月1日から、改正入管法の一部が施行されます。それに合わせて改正される入管法施行規則と省令について、現在意見募集が行われています。

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=Pcm1010&BID=300130037

 改正の狙いなど、いろいろ解説されていますが、政府の解説には書かれていない重要な改正が、今回は含まれているようです。以下の条文の新設です。

(資格外活動の許可)
第19条5項 許可する活動の内容は、次の各号のいずれかによるものとする。
1 一週について二十八時間以内(留学の在留資格をもつて在留する者については、在籍する教育機関が学則で定める長期休業期間にあるときは、一日について八時間以内) の収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動(風俗営業若しくは店舗型性風俗特殊営業が営まれている営業所において行うもの又は無店舗型性風俗特殊営業、映像送信型性風俗特殊営業、店舗型電話異性紹介営業若しくは無店舗型電話異性紹介営業に従事するものを除き、留学の在留資格をもつて在留する者については教育機関に在籍している間に行うものに限る。)


 これまで、資格外活動許可を取ってスナックなどでアルバイトしていた留学生が警察に摘発されても、すぐには処罰できませんでした。入管が「風俗営業店でバイトしてはだめ」と言っていたのは、法律の根拠がない決めごとだったからです。

 ただ、もしそのアルバイトの程度が「もっぱらその活動を行っている(つまりアルバイトではなく本格的に働いている)」と明らかに認められれば、違う条文(入管法24条4項イ)で国外退去処分にすることができます。なので、これまでスナックなどで摘発された留学生たちは、スナックで働いていたこと自体よりも、「そのバイトを長時間、学業がおろそかになるほどやっていたかどうか」を法廷で争っていました。そして留学生側が勝訴した事件もありました。

 が、新しい条文ができれば、時間の程度はどうあれ「風俗営業店で働いていた」という事実のみで処罰できるようになります。

 あと、この施行規則案では、退学したり卒業したあとでアルバイトを続けることも明確に禁止されています。

 では、スナックで摘発されたらすぐ国外退去になるかというと、それはなくて、「(本来の活動をおろそかにして)もっぱらその資格外活動をしている」と判断されなければ、すぐ国外退去にはなりません。

 とりあえず、この処罰が行われると考えられます。
第73条  第七十条第一項第四号に該当する場合を除き、第十九条第一項の規定に違反して収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行つた者は、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科する。

 意見募集は2月26日までです。私もゆっくり他の部分を読んでみます。

ホステスのバイトで国外退去させられますか

【注意】2009年の改正入管法により、資格外活動許可を持っていても性風俗関係の店で働くことが、正式に入管法違反になりました。罰則が科せられ、罰則が重い場合はそれを理由に国外退去処分もできるようになっています。

留学ビザで滞在している広島市内の中国人大学院生(31歳、女性)が、入国管理局の規定に違反するホステス業をアルバイトとしていたことを理由に広島入国管理局から国外への強制退去命令を受けたことについて、この命令が違法だとして留学生は国を相手に処分取り消し訴訟を起こしました。その判決が3月13日に広島地裁であり、中国人留学生側が勝訴しました。裁判長は、ホステスの仕事が学業に悪影響を与えたとは認められないとして処分の取り消しを命じました。

 問題は、この留学生がホステスとしてアルバイトしたことで、「正規留学生は週28時間までアルバイト可能で、風俗営業の店で働くことは全面禁止」という入管法の規定を違反したことに始まります。3月14日付読売新聞によると「1日3〜6時間、週3〜6日程度働いていた」とありますので、、労働時間というより、ホステスという職種に対する違反が大きかったようです。

 入管の規定だけを当てはめれば、確かに違反です。でも法律に照らせば、実は風俗営業の店で働いてはいけないという条文や、留学生のバイトは28時間以内といった直接の条文はありません。こうした規定は入管の裁量の範囲内で定められていて、事情に応じて入管が一方的に決めたり、変更できる部分なのです。

 実は退去強制にはこの規定とは別に根拠となる条文が必要で、この留学生のアルバイトがその根拠条文に当てはまるほどの違法性があったのか、というのが争点になりました。

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 入管が退去強制を決めた根拠条文は、入国管理法24条4号イでした。つまり、「こんな行為をした人は、退去強制しますよ」という項目を列挙した条文ですが、この中に「在留資格外の活動で報酬を得てはいけないのに、そういう資格外の活動を『専(もっぱ)ら』行っていると明らかに認められる人」という内容の項目あって、これが根拠条文でした。 

 争点は、この留学生のホステスの活動が、はたして「もっぱら」資格外活動をしていたと判断できるのか、です。

 「もっぱら」の基準の一つは「本来の在留資格の活動に支障が出るほど、その資格外活動をしていたかどうか」にあります。


 この留学生は必要以上に稼いで母国へ送金、といった悪質なケースではなく、本当に稼いだ金をすべて生活費に使っていました。そして学校では優秀な成績をおさめていたのです。それが判決のひとつの決め手となりました。

 判決では、「専ら」の解釈について、「ただそれだけを行っている」という趣旨の文言からかけはなれた解釈をしてはならない、との原告の主張を取り入れ、「教育を受ける活動を法が期待する程度に行っている場合は、当該活動が専ら資格外活動を維持する目的で行われているものでない限り」もっぱら資格外活動をしていたとは言えないと述べられました。

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 2007年3月28日にも東京高等裁判所で同じような判決が出ているようです。ここでは、「ホステスの仕事をしているという理由だけでは退去強制の根拠とならないので(売春などしている場合は別)、入管はそのような場合には、在留資格更新のときの裁量権を使って処分してください」という意味のことを書いています。

 つまり、「留学生がホステスとしてアルバイトしているだけでは即時の退去強制まではできませんよ。どうしても国外追放すべきというなら、留学生の次の期間更新のときに、入管の審査で不許可にすれば足りるでしょう」と言っているのです。「不許可→自主的に帰国(期限内に帰国しなければ退去強制)」なのです。

(これは2008年3月時点の話なので、今後裁判でこの判断基準が覆される可能性があることをご了承ください。)

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今回のお話の関係資料です。

退去強制令書発付処分取消等請求控訴事件(平成19年03月28日、東京高等裁判所)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20071016153728.pdf

資格外活動に対する入国管理局の規定
http://www.immi-moj.go.jp/tetuduki/zairyuu/shikakugai.html

■正規の留学生の資格外活動
1週について28時間以内(教育機関の長期休業期間にあっては,1日につき8時間以内)の収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動

■活動場所等の制限
風俗営業若しくは店舗型性風俗特殊営業が営まれている営業所において行われるもの又は無店舗型性風俗特殊営業,映像送信型性風俗特殊営業,店舗型電話異性紹介営業若しくは無店舗型電話異性紹介営業に従事するものを除く。

■入国管理法24条(注:退去強制に該当する行為について列挙した条文)
24条4号イ
 第19条第1項の規定(注:資格に定められた活動以外で報酬を得てはいけないという条文)に違反して収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を専ら行つていると明らかに認められる者

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