ラーメン屋のコックに在留資格認めるー東京地裁
2011年2月19日付読売新聞(電子版)によると、中国料理コックとして在留資格「技能」を与えられていた東京都の中国籍男性調理師(44)がラーメン店で勤務していて入管から在留資格取り消され、退去強制処分を受けていた問題で、東京地裁は18日、ラーメン店勤務は専門技能にあたるとして退去強制処分を取り消し、調理師の在留を認める判決を出しました。
報道によると裁判長は、ラーメン店でも中華料理の技能は生かされており、資格外活動とは言えないと述べたそうです。国側は「ラーメン店のメニューはみそラーメンなど日本で独自に発展したものがほとんどで、中華料理の専門技術は必要ではない」と主張したそうですが、「チャーハンやシューマイもあり、中華料理と無関係ではない」と裁判所は判断しました。
男性は1999年に入国し、神奈川県や東京都の中華料理店で働いていましたが失業し、再び本格的な中華料理店で働くため求職しながら2009年4月から東京都のラーメン店で働いていたそうです。
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驚いた!すごく驚きました!いやー、裁判は怖いですね(笑)。入管実務では、「技能」という在留資格は、母国独特の熟練した技能を使って働く外国人に与えられ、調理師(コック)もその中に入っています。調理師の場合は基本的に10年以上の実務経験が要求され、中華料理店の中国人コックはこの在留資格で働いている人が非常に多いです。
この在留資格で認められる調理師は、「料理の調理または食品の製造に係る技能で外国において考案され我が国において特殊なものを要する業務に従事する者」(入管法7条1項2号基準省令)となっています。だから国側は、「ラーメン店のメニューはみそラーメンなど日本で独自に発展したものがほとんどで、中華料理の専門技術は必要ではない」と主張したんですね。それに対する裁判所の答え「チャーハンやシューマイもあり、中華料理と無関係ではない」は、うーん、確かにそうですけど、ラーメン屋のメーン料理はラーメンであるというところで説得力が弱くなりそうな気も…。シューマイ手作りするラーメン屋も聞いたことないし…。
実務上の暗黙の基準として、「技能」のコックが本来働くべき(と入管のイメージする)料理店というのは、コースメニューなど高度な技能を使った料理を出す高級外国料理店です。が、実はこれは暗黙の基準であり、明文化はされていませんでした。つまり裁量です。この裁量には多くの店が泣いてきましたが、裁判所はこういう明文化されていない部分を「なかったもの」としてバッサリ斬って、「ラーメン屋でもいいんじゃない」と言ってしまったわけです。ちょっとだけすがすがしい気分がしましたが(笑)、こういう判例が重なることによって、入管もこういう部分を明文化せざるを得なくなってくるのかな、と思いました。
あ、だからといって失業中のコックのみなさん、安易にラーメン屋へ就職しない方がいいですよ。国がすぐ控訴するんじゃないかと思いますから。
- 2011.02.19 Saturday
- 技能(在留資格)
- 17:55
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- by まつだ国際法務オフィス