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留学生への貸与型奨学金についての入管指針(2018.3)

貸与型奨学金というのは、看護学校奨学金の「お礼奉公」に似た強制労働状態(先に負債を負わせて労働させる)の問題が含まれているので、入管も厳しく審査してきました。このたび入管は、その明確な留意点をまとめたようです。

 

貸与型奨学金により学費等の経費を支弁しようとする留学生(留学希望者を含む。以下同じ。)及び当該留学生の受入れを予定している教育機関のみなさまへ

 

http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri07_00155.html

 

平成30年3月 法務省入国管理局

 

本邦に在留する期間中の生活に要する費用(学費・生活費)を貸与型奨学金(都道府県等が実施主体となる修学資金等貸付制度を除く。)により支弁しようとする留学生及び当該留学生の受入れを検討されている教育機関におかれましては,当該奨学金の貸与条件等に関し,適正な出入国管理を行う観点から,以下の点に御留意いただくようお願いします。

1 貸与条件

留学生としての本来活動の継続が困難とならないよう,貸与を受ける留学生が以下に該当する場合を除き,原則として,在学中にその貸与を終了する条件が付されていないこと。

例えば,奨学金の貸付の際に指定された稼動先(アルバイト先)を辞職した場合に貸与を途中で終了することを条件とすることは認められません。

(1)退学したとき。

(2)心身の故障のため修学を継続する見込みがなくなったと認められるとき。

(3)学業成績が著しく不良となったと認められるとき。

(4)奨学金の貸与を受けることを辞退したとき。

(5)死亡したとき。

(6)その他奨学金を貸与することが適当でないと認められるとき。

2 返済条件

(1)在学中の返済が求められていないこと

留学生は我が国において勉強に従事するために入国・在留が認められているものですので,在学中の返済は,留学生としての本来活動に支障が出るおそれがあることから,原則として認められません。

なお,入国後,例えば長期休業期間等で資格外活動による収入が多い月に,留学生本人の希望により,生活に支障のない範囲内で繰上返済を行うことは差し支えありませんが,貸与した法人により繰上返済が強要されることは認められません。

(2)貸与額の残額を一括で返済する等の条件が設けられていないこと

奨学金の貸与を受ける場合,留学生が貸与額を一括で返済できる資産を有しているとは通常考え難いことから,次のような場合に一括で返済する又は違約金を徴収する等の条件が付されているものは認められません。

ア 貸与を途中で終了した場合

イ 就労に係る在留資格への変更が認められなかった場合

ウ 卒業後に奨学金を貸与した機関等の特定の機関で就労しない場合

エ 返済期間中に特定の機関を辞職する場合

また,奨学金の貸与を受ける留学生が奨学金の返済期間の途中で本国へ帰国する場合に,本邦に引き続き在留する場合よりも高額な返済が求められることは適当ではありません。

なお,特定の機関において一定期間就労した場合に,就労期間に応じてその返済の一部又は全部を免除することは差し支えありません。

(3)返済額が,就職後に得られるであろう収入からみて生活に支障のない範囲内であること

例えば,月当たりの返済額が手取りの約1割以内であれば,一般的には生活に支障のない範囲内と考えられます。

なお,収入が多い月などに留学生本人の希望により繰上返済を行うことは差し支えありませんが,貸与した法人により繰上返済が強要されることは認められません。

3 その他

(1)奨学金の貸与を受ける留学生が奨学金の貸与条件及び返済条件を理解していること。

(2)奨学金貸与期間中の資格外活動許可に基づく稼動(アルバイト)先及び教育機関卒業後の就労先があらかじめ決められている場合には,奨学金の貸与を受ける留学生がその労働条件を理解していること。

(3)本邦に在留する期間中の生活に要する費用(学費・生活費)のすべてを奨学金(注)により支払う場合を除き,奨学金以外の方法により支払うこととなる費用について,現に有する預貯金等により支弁可能であると確認できること。

(注)貸与型・給付型を問わない。

4 在留資格認定証明書交付申請における経費支弁に係る提出資料

貸与型奨学金により学費等を支弁しようとする場合には,在留資格認定証明書交付申請において,現に有する預貯金等の資料に加えて,以下の提出が求められます。

また,在留期間更新許可申請においても提出が求められる場合があります。

(1)奨学金の貸与条件及び返済条件を規定している資料(奨学金貸与規程等)

(2)奨学金の貸与に係る契約書の写し(貸与を受ける留学生が自筆で署名したもの)

(3)奨学金の支給回数等具体的な貸与方法を説明した資料(貸与する法人から授業料として直接教育機関へ年2回支給,貸与する法人から留学生の銀行口座へ毎月支給等)

(4)奨学金貸与期間中の資格外活動先があらかじめ決められている場合には,留学生が稼動することとなった場合の勤務時間や給与等の雇用条件が分かる資料及び留学生が当該条件について理解している旨を申告する資料(留学生が自筆で署名したもの)

(5)奨学金を貸与する法人の登記事項証明書(全部事項証明書)及び直近の決算書(損益計算書,貸借対照表)

(6)教育機関卒業後の就労先があらかじめ決められている場合には,当該雇用条件が留学生と同等の経歴を持つ者が稼動する場合の雇用条件と同等であることを説明する資料(例えば,就業規則の写し等)及び留学生が当該条件について理解している旨を申告する資料(留学生が自筆で署名したもの)

※ 貸与型奨学金以外に係る資料については,留学生は受入れ先の教育機関へ御確認のうえ,御提出ください。また,教育機関におかれましては,各地方入国管理局の案内に沿って御提出ください。

※ 審査の過程において,上記以外の資料を求める場合もありますので,あらかじめ御承知おきください。

(参考)労働関係法令との関係

(1)在学期間中の資格外活動許可に基づく稼動(アルバイト)先や教育機関卒業後の就職先をあらかじめ決められていることを条件に,奨学金の貸与を受けることについては,直ちに労働契約法及び労働基準法に抵触するとは言えませんので,奨学金の貸与・返済条件が上記1及び2に合致するものであり,奨学金の貸与を受ける留学生が,上記3(2)のとおり,労働条件について理解し,了承しているのであれば,在留資格「留学」に係る入国・在留審査においては差し支えないこととして取り扱います。

(2)労働することを条件として貸与される奨学金の返済方法として,使用者が留学生の給与から一方的な天引きを行う場合には,労働基準法第17条に抵触することに御留意ください。

なお,留学生が自らの意思により天引きを希望する場合には同条には抵触しませんが,そのような形式がとられている場合であっても,実質的にみて使用者の強制によるものと認められる場合には,同条に抵触することとなります。

※ 詳細につきましては,管轄の労働基準監督署へお問い合わせください。

 


岡山朝鮮学校公開授業2018

今年も、日本人らでつくる「日本と南北朝鮮との友好を進める会」主催による岡山朝鮮学校の公開授業が行われました。さらっと写真でご紹介。

 

私の好きな、習字(見るのが好き)。今年もいっぱいありました。

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シュールな日本文。こういうの、意味も深く考えず書いてしまうシュールな科目が、習字。

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ハングル文字にも当然、美しい形というのがあるそうで、そういうのを知るともっと面白いのかもしれないな。

 

授業中の子供たち。一生懸命。理科かな?

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子供、ちっちゃいな!1年生。少し日本語を交えてハングルで話しかける先生。私もここで勉強したらハングルできるようになるかな。

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あ、ベルマーク。

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廊下の掲示。先生の字は美しいですね。

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廊下の掲示。「スゴく回すのが速い漁師」って何やねん!

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中3の教室の「成長記録」。中3にはどう成長するかな?の「?」

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日の当たる廊下はいつも懐かしい感じ。

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朝鮮学校に対する高校無償化助成金を出さない差別的措置について、日本政府は国連人権委員会から是正勧告を受けています。そのときの国連委員会に行ってきたという英語の先生による報告がありました。朝鮮学校の立場を訴えるロビー活動を行い、一人ひとりの委員に実情を説明したそうです。戦う言論ここにあり、という感じで、ちょっと鳥肌が立ちました。民主主義や平和主義とは安穏とした仲良し世界ではなく、言論という土俵で戦うことで権利に光を当てる、激しく動的な世界なのだ、と思い知らされるような。

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 私は過去に友好親善訪問団に入れてもらって朝鮮共和国へ行ったことがあります。日本の在日朝鮮系の人たちもそうですが、根がすごい真面目で、かなり聡明な人も多い。当然なんですけどね。だからこそ、対話の局面に来ている朝鮮半島の情勢の中でも、破綻せずに交渉を続けていられるし、他国(ロシア、米国、中国など)も対話の方向に動こうとしているのだと思います。聡明な人が、これからもたくさん育ってほしいです。そして、それを支えられる日本社会でありたいです。


在留資格「高度専門職」の勤務先「法務大臣が指定する機関」とは?

在留資格「高度専門職」で働く人の勤務先は、入管法上で「法務大臣が指定する本邦の公私の機関」となっています。

 

どうやって指定されるのか?指定を受けるにはどうすればいいのか?という質問を受けましたので、広島入国管理局へ問い合わせて回答いただきました(2018年9月6日)。

 

 外国人がまず、特定の会社でこれから働く旨を申請書に記入し在留資格「高度専門職」の許可申請を行います。

  ↓

 許可が出たら、その時点で申請書に書かれた雇用企業が「法務大臣の指定を受けた」とみなされるそうです。

 

 つまり、事後指定という感じです。別にネット上に公表されるわけでもありません。

 

 A社で働いていた「高度専門職」(在留期間5年)の人が、在留期間を3年残したところでB社へ転職することになったときは、どうすればいいのでしょうか。

 

 B社はまだ「法務大臣から指定を受けていない」わけなので、改めて入社前(雇用契約は交わしている段階)に申請をしなければなりません。これは、基本的には「在留資格変更」を申請することになるだろうと思います(「A社で働くための高度専門職」から「B社で働くための高度専門職」への変更)。

 

 ちなみに、在留資格「技術・人文知識・国際業務」であれば、在留期間中に同職種の別会社へ転職しても、事前の許可は必要ありません。入社後の14日以内に入社に関する届出を入管へするだけです。取り扱いが違いますね。なので、気を付けなければいけません。

 

このあたりの違い、私もあいまいだったので、勉強になりました。

 

 

 

 

 


つれづれ書評「彼女は頭が悪いから」

 

 SNS上であまりにもみんなが「衝撃すぎて苦しい」「救いがなくてしんどい」というので、気になって読んでしまい、やっぱりしんどかったので、書いて楽になろうと思って書きました(笑)。

 

 小説の元になっているのは、2016年に起こった東大生5人による大学生(女性)への強制わいせつ事件です。本当の事件と裁判の推移については、このページで見ることができます。https://abhp.net/news/NEWS_997100.html

 

 5人中3人が起訴され、3人とも有罪判決を受けました。事件は、「東京都の容疑者の 1人の自宅マンション室内で、約 1時間にわたり、女子大学生の服を無理やり脱がせて全裸にし、胸など体を触ったり、キスするなどした」というものでした。

 

 小説はフィクションですが、設定と話の流れは実際の事件とほぼ同じです。加害者と被害者の中学時代からの生い立ちを丹念に書き加え、加害者がどのようにして「彼女」への共感を欠く状況になっていったか、被害者がなぜ「彼」から逃げられなかったのか、という背景が分かるようになっています。

 

 読んだ後に私自身がショックだったのは、性加害について「どの程度の物理的加害だったか」でものごとを量るくせが自分にもついていた、と気づかされたことでした。手を触れなくても、強姦しなくても、人を精神的に殺すことができる、という事実への鈍感さ。相手が精神的に死ぬことへの鈍感さ。

 

 物理的な殺し合いができるようになる前には、精神的な殺し合いがすでに始まっているのでしょう。見えないところで殺されている人たち、そして殺している人たち。その自覚もないままに。

 

 裁判は有罪でしたが、小説の中では被告もその親も「ただの悪ふざけでなぜ有罪なのか」と思い、ネット上も「女が軽率すぎた」と非難する描写が出てきます。実はここが一番怖い、と思いました。

 

 自分たちの感覚が正しくて法律がおかしい、という声が大きくなるとき、法律の力は弱くなります。法律は法律の価値観を信じる人たちによって力を与えられるからです。

 

 姫野カオルコさんの小説は初めて読みました。最初の4分の3は少し姫野さんの「思い入れ」の強い描写説明がしんどかったのですが、最後の4分の1で、しっかりまとまっていました。「魂の殺人」は、その重さをきちんと感じて公正に裁かれるべきである。そんな法の価値観を姫野さんは支えたかったのでないか、と思います。そして鈍感になった私たちに、魂の重さを手に取って感じられるようにしてくれたのだと思います。

 

 本の表紙の絵「木こりの娘」は、ジョン・エヴァレット・ミレイの作品です。女性や身分の低い人たちが長年かけて勝ち取った人権とは何だったのか、いろいろ考えさせられる意味深な絵です。

https://www.musey.net/15450


個人情報書類を処分しました

 

今年も、個人情報書類の処分をしました。リバースプラザさんにお世話になりました。リバースプラザさんにはいつも丁寧に対応していただいて感謝です。


Immigration's Information for Water Disasters Victims 水害被害者の方へ‐広島入国管理局

***Announcement from Hiroshima Immigraion***
広島入管(ひろしまにゅうかん)からのおしらせ

[For Non-Japanese who suffered heavy rain disasters in West Japan]

...

【豪雨災害(ごううさいがい)にあわれた外国人(がいこくじん)の方(かた)へ】

 

If you are in a shelter or other temporary house, you can apply for re-issue of Zairyu card at any nearest Immigration Bureau of your current location no matter where you currently evacuate.

避難(ひなん)している方(かた)は,「在留(ざいりゅう)カード再交付(さいこうふ)」の手続(てつづき)を避難先(ひなんさき)の近(ちか)くの入国管理局(にゅうこくかんりきょく)ですることができます。住(す)んでいる所(ところ)の入国管理局(にゅうこくかんりきょく)だけでなく,避難(ひなん)している所(ところ)の近(ちか)くの入国管理局(にゅうこくかんりきょく)でも手続(てつづき)をすることができます。

 

Please apply for re-issue of a Zairyu card if you lost it. It is OK even if you do not have a lost certificate issued by police or any other IDs. Please bring Risai Shomei or Hisai Shomei (if any) .

在留(ざいりゅう)カードを紛失(ふんしつ)したときは,近(ちか)くの入国管理局(にゅうこくかんりきょく)で在留(ざいりゅう)カード再交付(さいこうふ)の手続(てつづ)きをしてください。
紛失証明書(ふんしつしょうめいしょ)(警察(けいさつ)が発行(はっこう)する証明書(しょうめいしょ))や身分(みぶん)を証明(しょうめい)する書類(しょるい)がなくても,手続(てつづ)きをすることができます。
被災証明書(ひさいしょうめいしょ)や罹災証明書(りさいしょうめいしょ)を持(も)っていたら,持(も)ってきてください。

 

Call Hiroshima Immigration at 082-221-4412 if you have troubles with collecting document for application, lost Zairyu card, and so on.

入管(にゅうかん)の手続(てつづ)きをしたいけれど書類(しょるい)が揃(そろ)わない,在留(ざいりゅう)カードがなくなってしまったなど,入管(にゅうかん)の手続(てつづ)きに困(こま)っていたら,電話(でんわ)で相談(そうだん)してください。
電話番号(でんわばんごう)は082−221−4412です。


【韓国籍の方へ】「家族関係登録簿」診断キャンペーン

在日韓国民団では韓国籍の方のために、家族関係登録(日本の戸籍にあたるもの)の情報が正しいかどうか診断するキャンペーンを12月まで行っています。


相談は基本的に無料です(書類取り寄せなど実務が伴う場合は手数料がかかります)。

 

家族関係登録は2008年に新しくできた制度です。在日韓国人の方の間では、次のような問題がこれまでに起こっています。
・家族関係登録簿が存在しない
・出生、婚姻、死亡などの登録をしていない
・重婚になっている
・誤記がある(生年月日、姓名など)
・記載内容が事実と大きく異なっている(家族構成、続柄、過去のことなど)
・知らない人が家族として登録されている

 

登録簿の内容を正しくしておかないと、相続、裁判など手続きが必要なときに長期化することもあります。

 

【相談に必要なもの】
・家族関係登録の証明書類(家族関係証明書、基本証明書、婚姻関係証明書、入養関係証明書、親養子関係証明書、除籍謄本)

 

【訂正が必要なときに日本側で事実確認できる資料】
・閉鎖済み外国人登録原票(法務省へ郵送で個人情報開示請求する)
・住民票
・出生届、婚姻届、死亡届のコピーなど過去の日本の役所への届出が分かるもの

 

【相談先】
岡山の方は、おかやま民団(生活相談センターおかやま) TEL 086−225-0826
その他の方は、全国の民団地方本部、みんだん生活相談センター

http://www.mindan.org/seikatsu.php


※韓国からの証明書の取り寄せからお手伝いしています

 

ちらしはこちら 

 

PDFはこちら

https://goo.gl/PnXViv


日系4世のさらなる受け入れ制度(法務省PRサイト)

http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri07_00166.html

 


福田事務次官のセクハラと沈黙させられる記者

夜回り取材中にセクハラを受けていた記者の告発が週刊新潮に出てから、該当するマスコミは沈黙を続けています。

 

当事者は当然、だれか分かっていると思います。事務次官に直接呼び出されるのは番記者くらいだろうし、そんな人は記者クラブ名簿に当然名前が挙がっているだろうし、当然財務省も名簿を持っているし。

 

財務省は、弁護士を立てて調べると強気に出ています。あの強気の理由を憶測すると、記者の所属新聞社が政権に近い立場にあって、官邸は裏で新聞社幹部と話して「あの一件は社の意向と関係ない個人の行動だから、関知しない」などと言われて、個人攻撃で記者個人をつぶすことにしたのではないか、と思うのです。

 

女性が夜回り取材でセクハラを受ける、というのは、相手のプライベート時間に食い込んで情報を引き出そうとした「通常業務」の結果だけれど、こういう問題が起きた時には「勤務時間外の単独行為」とみなされるのかな。リークした記者は、きっと先輩から「業務」として夜回りを任されていたのだろうに。該当する社が名乗らないのは、自分たちも夜回りセクハラの事実を隠したいと思っているからではないでしょうか。

 

組織の取材というのはチーム作業で、事件など何もない日の夜回りは駆け出しの記者が当たることが多い。本当は新人が一人で夜回りして事務次官から特ダネが取れるわけないけれど、それは日常の確認を兼ねた「顔つなぎ」であったり、「雑談の相手」として差し出される意味合いがあります。その「雑談の相手」が時に「酒の相手」となり、相手が性的な色合いを帯びた目で記者を見始めたら、それはもう「記者」には見えないのだろうと思います。

 

そんな状態になったとき、女性記者はどうするかというと、一人で逃げ、耐えるしかない。嫉妬深い男性記者は、女性に夜回りをさせながら「あいつは体でネタを取る」と陰口をたたいたりします。今回の記者の会社は、「夜回りのセクハラはやむなし」という男社会の論理が支配している会社だったのかもしれません。そして今、沈黙している社内で、記者の彼女はどんな状態に置かれているか想像すると、本当に胸がふさぐような思いがするのです。

 

夜回りが嫌いだった記者時代を思い出して、なんだか落ち着かない日々が続いています。セクハラを告発した女性記者が孤立させられる姿は、私から見ると絶望で背筋が凍るような光景です。


韓国系、朝鮮系、それぞれの新年会 

今年は珍しく韓国民団と朝鮮総連のそれぞれの新年会に出席できる機会があったので、参加してきました。おいしい料理もいただきましたけど、何よりもがっつりと「平和的に紛争を解決するにはどうすればいいか」という命題を勉強させていただきました。

 

  □  ■  □

 

最初は韓国民団の新年会。平昌オリンピックが迫っていることや、朝鮮共和国との緊張緩和への期待が高まっていたこともあり、人々の気持ちは上向きな感じで、華やかな宴でした。

 

ただ、神戸の韓国総領事のお話は少しトーンが違いました。緊張している日韓の問題について、日本語で丁寧にお話してくださいました。

 

総領事は、「文大統領が慰安婦問題合意に関する公約を撤回した」という発表がまるで合意を撤回したかのように誤解されている、と非常に気にしていました。

 

文大統領は選挙時に、慰安婦合意について(見直しのため)日本と再交渉すると公約していました。でも結果的には、二国間合意を維持して見直しの交渉はしない、と決めたのです。それが「公約の撤回」の意味なのだと話していました。

 

つまり、合意に関する韓国市民の不満はあくまで韓国内で対処し、日本との約束を尊重した、ということです。国際的な合意の意味を重んじた決断をしたのだと思います。

 

 朝鮮半島をめぐる緊張状態への対処については、「日韓がともに空高く羽ばたき、遠くを見通す気持ちでこの問題に取り組むことを望んでいます」と述べられました。

 

世界全体で取り組むべき問題として朝鮮半島問題をとらえ、各国が自分の役割を自覚して冷静に対処すれば、解決への希望が見いだせるのではないか、という提案なのだと思います。

 

□  ■  □

 

朝鮮総連の新年会は、第一部が講演会、第二部が懇親会でした。

 

講演は、元外務省職員で、ソ連、中国公館への在任歴がある浅井基文氏が朝鮮半島問題とその展望についてお話してくださいました。

 

アメリカは、敵対する国(イラク、朝鮮など)を「脅威」(攻撃してくる危険がある)だとして攻撃したり、攻撃するぞと脅したりしている。だが「脅威」とされた国々の側から見れば、アメリカが攻撃してくるから防御のために武装している側面が強い。朝鮮共和国政府も繰り返しそう発言している。アメリカが威嚇をやめて安全を保障することで、朝鮮共和国側の武装解除が現実味を帯びる、と浅井先生は説明されました。

 

講演のお話によると、1950年ごろの南北朝鮮が激しく対立していた時代は、韓国の背後にアメリカ、朝鮮共和国の背後にソ連と中国がいた。だけどロシア(ソ連)は、1990年代の国内体制崩壊、再編成の時代に国際問題から手を引いた。中国も経済開放路線に転換してから国際対立を避けるようになり、結果として朝鮮共和国が孤立化した。そしてアメリカの圧力が肥大化し、パワーバランスが大きく崩れたそうです。アメリカを抑制する国がいなくなってしまった。

 

紛争回避の動きとして浅井先生が注目しているのは、朝鮮共和国が国連組織と意思疎通を始めたという部分だそうです。国連が朝鮮共和国の協力を得て本格的に平和的解決に取り組み始めたら、アメリカも勝手に攻撃はできなくなる。これがアメリカに対する抑止力になる可能性は大きい、というのです。

 

文大統領の政治的対応にも注目しているそうです。韓国はアメリカに対して力を持つようになっているので、韓国がNOと言えば、アメリカは勝手には朝鮮共和国を攻撃できない。これも抑止力になっているということです。

 

よく考えると国連の役職員にも韓国の人がいましたね。韓国の中では、国際的視野で問題解決を図るための努力が地道に行われているのかもしれません。文大統領も親が脱北者だったということで、北への思い入れ(配慮)は深いのではないかと思います。

 

国際紛争の解決は一国が圧力で制するのではなく、国同士のパワーバランスを回復させる方が人的被害を最小限にできるのではないかな、と私は思っています。講演のあとで浅井先生に尋ねてみました。

 

「今はロシアも国力を取り戻して、中国も安定してきたので、この二国がアメリカとのパワーバランスを取ることで問題解決に結びつく可能性はありますか」

 

「確かにロシアも中国も国際問題の解決に興味を持って取り組み始めたので、パワーバランスはそのようになるかもしれません。でもアメリカは北朝鮮問題があるから日韓に米軍を置けているという事情があるので、解決はやはり簡単ではないでしょう」

 

というお答えでした。

 

 □   ■   □

 

市民としては問題をどう見ていくべきなのか、ですが、浅井先生はよい言葉をおっしゃっていました。

 

「他者(相手側)になりきって、なぜ相手がそのような心情になるのか分かるまでなりきることで、相手を理解できて現実的な解決が見えるようになる」

 

相手がどんな歴史、文化、問題背景で今のような敵対的な心情や態度を抱くようになったか、を相手になりきって知ること。これを「他者感覚」と呼んでいました。

 

「他者感覚が真の平和の土台です」(浅井基文)

http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/2007/197.html

 

この感覚を浅井先生は外交の現場で身につけたといいます。

 

たまたま第二部の懇親会でトークした在日サッカー選手(日、韓でプレーし、北朝鮮代表にもなった)のアン・ヨンハさん(倉敷出身)も「日、韓に住み、共和国の人たちとプレーする中で、多くの立場を理解できるようになった。在日コリアンというのは多くの当事国市民の立場を理解できるという点で、自分たちにこそできることがあるはず」と話していました。

 

これを聞いて私のテーブル周辺では「これは、浅井先生の【他者感覚】ですねえ〜」と静かに盛り上がっていたのでした(笑)。

 

アン・ヨンハ

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E8%8B%B1%E5%AD%A6

 

 


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